さて、あけましておめでとうございます。TOM1192です。
今年1発目の記事はTwitterのTLに流れてきたこのスクショについてざっくりと解説します。
なめとんのか pic.twitter.com/0fwVpuGv9V
— 宇摩しま@高専受験生(自覚なし) (@Umashima87) 2023年1月9日
該当のツイートはコレですね。
スクショ自体は別のブログとかの記事のようですが、ここに書いてある「i5は脳みそが5個ある」という文言が気になりますね。
ちょくちょく解説をします。
1.Core i5とは
Intelが2009年より発売し始めたCore iシリーズのメインストリーム向けに用意されたブランド名です。
当時は4コアないし2コアで2コアのほうには現代に続くCPU内蔵GPUが初搭載されました。
そして時代を追うにつれ6コアになり、最近では6コア+8コアというハイブリッド構成になるなど現代においてもメインストリーム普及帯を担当するCPUとなっています(最上位種は準ハイエンド級となっていますが)。
さて、ここまで書いてあることを読めばわかる通り、本来奇数のコアは生まれないのがIntelの作り方。
そのため、Core i5においては2・4・6・10・14コアしか基本的に存在しません。
ただし、1つの例外を除いては…
2.現行Core iシリーズの先駆け「Lakefield」
IntelはCoffeeLakeの発売以降、AMDの復活の一撃であるZen2に押されており、また次世代プロセスルールである10nmが遅延に遅延を重ねてしまいます。
そして、ようやく完成したのが「IceLake」で、こちらはデスク向けには非採用のアーキテクチャです。
その直系が「TigerLake」であり、この後の「AlderLake」のP-Coreへとつながっています。
さて、AlderLakeにはP-Coreとは別に効率の良いE-Coreが別で実装されているのは周知の事実だと思います。
E-Core側の技術はAtom系列から続くモノであり、低消費電力だけど圧倒的パワー不足みたいなCPUでした。
この欠点は10nmになった世代でようやく改善がみられ、後にE-Coreとなったというわけですね。
で、方式はAlderLakeからと思われがちですが、初採用は別のCPUでした。
それが「Lakefield」であり、P-Core1コア+E-Core4コアの合計5コア5スレッドという最初で最後の奇数マルチコアCPUです。
CPU名はCore i5-L16G7。命名規則はIceLake以降のCPUに近い雰囲気がありますね。
なお、Core i3-L13G4という兄弟CPUもいます(こちらも同じく1C+4Cの5コア)。
3.その意味と価値
こうした不思議なCPUが投入された経緯は時代におけるCPUの使い方によるものが大きいかと思います。
現代のスマホ向けのCPUやAppleSiliconのCPUは高性能コアと低消費電力なコアの2種類を併載し、普段は低消費電力なコアを動かし、パワーが必要な時は高性能コアも並行して稼働させるという「big.LITTLE」という方式が採用されています。
この方式におけるメリットは
- CPUパワーをより動的に制御できる
- 低消費電力なコアに不要な処理を投げて、高性能コアの処理能力を空けられる
といったものがあり、バッテリー駆動が起こるノートパソコンやスマホには非常に相性がよい方式となっています。
一方でIntel・AMDのx86系はパワーのあるCPUの稼働率で調整するか、パワーのないCPUを複数搭載してごまかすの2択しか採用していませんでした(特に旧来のCore iシリーズのHKとかは顕著な仕様)
この状況を打破するために投入されたのが「Lakefield」となるわけですね。
x86系における史上初のbig.LITTLEであり、そののちのAlderLakeにて完成したのを見ればわかる通り、マルチコアのあり方を変えたCPUといえるでしょう。
4.一方のAMDはというと
現状、この方式はIntelのみでしか採用されていません。
そもそも、AMDはこういった分野で思いっきり戦う気はなく、無論Zenシリーズの高効率化は進めていてもこうしたハイブリッド方式には現段階では興味がないようです。
まあそれに関しては、Zenシリーズがワークステーション向けCPUをメインストリーム帯に落とすことが目的に開発されたのもあり、いつかは採用されることはあっても直ちに採用されることはないとは思います。
とはいえ、今後も比較対象にあることは変わらないでしょうし、双方意識してるところはあるので、動向をチェックしておくに越したことはないでしょう。
5.さいごに
ちなみに、LakefieldはAlderLakeよりも技術的なレベルが高いCPUであり、CPU・GPUに加えてRAMも同じ部分に積層しているという構造になっています。
これはSOCとしての機能の集約においては非常に重要なことであり、既存の縦に積むメモリ技術であるHBMとかとも相性の良い技術であると私は考えています。
もしかすると、ちょっとした未来のCPUにはiGPU向けやCPUキャッシュ用にHBMを積んだCPUが生まれてくるのかもしれません(すでにAMDが3D Cacheとして実現しているものの別アプローチと考えていただければ)。
もっとも、Lakefield自体は最初で最後の世代となってしまったため、その技術が再び日の目を見るのはかなり先になってしまうのかもしれません。
現在、またしも微細化に黄信号が灯っているIntelですが、こうしたアプローチで新たな形を提供してくれるのを期待しつつ締めとさせていただきます。
余談ですが、AlderLakeのモバイル向けCeleronにその生き残りっぽいCPUがいます。
その名はCeleron 7305(と7305E)。コア構成・スレッド数も全く同じCPUですね。
ワンランク上のPentiumはHTTが有効化されてるのでコア数が同じでもスレッド数が違います。